以前、話題になった安楽死事件の裁判に進展があった。
2人の男性医師が、患者の希望で安楽死をさせた事件である。
主は医療関係者でも法律のプロでもない素人。
この事件と安楽死の制度について思うことをおふざけ無しで伝えたい。
読売テレビより
参照記事：【速報】ALS患者嘱託殺人事件の裁判 医師の男に懲役23年を求刑 京都地裁
2019年、難病のALSを患う女性に依頼され殺害した罪などに問われている医師の男の裁判員裁判で検察側が男に懲役23年を求刑。
医師の大久保愉一被告（45）は、知人の元医師・山本直樹被告（46）とともに、2019年、全身の筋肉が衰える難病・ALSを患う林優里さん（当時51）から依頼を受け、薬物を投与して殺害した嘱託（しょくたく）殺人などの罪のほか、2011年には山本被告の父親を殺害した罪にも問われている。
検察側「自発呼吸も可能で、死期は迫っておらず、許容され得る最低限の条件すら満たしておらず、社会的相当性はない」と指摘。
山本被告の父親の殺害について「退院後すぐに病死・自然死するとは考えられない健康状態で、山本被告らとのメールのやり取りなどから被告らによって殺害されたのは明らか」とのこと。
被告は『医療費を貪り・家族の手を煩わせる老人』や『死にたいと願う難病患者・障害者』は積極的に殺害する対象と考えている。
「医師という特権的な立場を利用して医療知識を悪用し、不要な人間や死にたい人間を殺害するという極めて特異な罪質の事件」と批判。
「終始主導的に計画を立案し、主犯として犯行を実行しており、強い非難に値する」
として大久保被告に懲役23年を求刑した。
弁護側「林さんの命は林さんだけのもので、どうありたいかは林さんだけが決められるもの。林さんの選択と決定について個人の尊厳は最大限に尊重されるもので、それを否定することは憲法13条に違反する」
として無罪を主張。
判決は来月5日。
大久保被告「起訴状のとおり間違いありません。ただ、私は林さんの願いを叶えるために行ったことです」
弁護側「林さんの自己決定権に基づき願いを叶えたと言えるので、嘱託殺人にはあたらない」
大久保被告が開設したとみられるブログには、「高齢者を『枯らす』技術」とタイトルが付けられ、“安楽死”を肯定する内容が度々投稿されていた。
ALSを患っていた林さんは、大久保被告とSNSを通じて知り合い、事件前には、安楽死を望む林さんとのSNSでやりとりを行っていた。
一方、大久保被告は林さんの主治医ではなく、十分な診療もしないまま出会ってわずか16分で犯行に及んだ。
親族やヘルパーなどの関係者に知らされることなく、胃ろうに薬物を直接注入するという方法で秘密裏に犯行に及んだ。
林さんの父親の意見陳述「ネットで口車に乗せられて、二度と戻ることのできないところに行ってしまいました。大久保被告は薬を注入する時どんな気持ちだったのか。普通の人間ならできない。憐憫の情があれば、なぜ思いとどまるよう説得できなかったのか。心底恨みます」
共犯とされる山本被告も無罪を主張。
京都地裁は去年、林さんへの嘱託殺人と父親への殺人について、大久保被告との共謀を認定した上で、山本被告に実刑判決を言い渡した。
いずれの判決も不服として控訴している。
読売テレビより
ALSとは
筋萎縮性側索硬化症（ALS）とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく国指定の難病。
この事件は、不治の病に侵されたALS患者を安楽死というカタチで死亡させた医師が罪に問われた事件である。
日本での安楽死制度を考えるきっかけになった重大な事件でもある。
もちろん日本では、安楽死の制度が認められていないので、患者本人の希望だとしても命を奪うことは許されていない。
結果、医師が殺人犯として起訴され、懲役刑が求刑された。
地方裁判所の判決を不服として、逮捕された医師がそれぞれ控訴している。
京都地裁の判決が出ても、確定ではない。
上告して最高裁まで争われるのが濃厚だろう。
安楽死を巡った裁判所の求刑
主は裁判所の求刑を尊重する。
医師の行動が認められる判決となれば、全国で同様の事件が多発する可能性があるからだ。
また十分な診察もなく、簡単に安楽死させることが可能になってしまうと危険である。
患者本人が本当に望んでいるのかもわからないまま葬られてしまう可能性があるからだ。
今回の事件では、主治医でもない医師がSNSで知り合った女性を出会って早々に葬ってしまった。
これの正当性が認められることになるのは危険だろう。
もし安楽死制度が認められる形になるとしても、制度をしっかりと作りこまなくては危険なのだ。
安楽死制度そのものは議論した方が良いけど、短期間に簡単に安楽死させることができる制度になってしまうのも良くない。
本人の意思に関係なく、周囲の人間から安楽死を勧められてしまう可能性も考慮しなくてはいけない。
姥捨て山のごとく、家族から安楽死を勧められる安楽死ハラスメントが社会問題になるかもしれない。
なので安楽死を可能にする場合は、十分な制度作りが必要といえる。
なので安楽死に関与して逮捕された医師達は、しっかりと法の裁きを受けるべきだ。
リアルドクター・キリコ
だけど、ある意味では、医師の思いやりで患者の意向に寄り添った結果でもある。
医師を犯罪者として裁いても良いものなのか疑問も残る。
だけど逮捕された医師が快楽殺人者である可能性も否めない。
今回、逮捕された医師は、手塚治虫氏原作のマンガ「ブラックジャック」の影響を大きく受けているとのこと。
特に作中に出てくるドクターキリコというキャラを尊敬しているという。
ドクター・キリコは、大金を得て患者を安楽死させる闇の医師。
一方で主人公のブラックジャックこと間黒男は、命を諦めない凄腕の無免許医師。
つまりドクターキリコは、ブラックジャックと正反対の医師なのだ。
無理な治療を諦めて、患者をラクにさせてあげるという考えである。
おそらく、現役の医師の中にもブラックジャック（もしくはドクターキリコ）の考えに共感している人は多いと思う。
主も命の在り方、社会の在り方について「ブラックジャック」から大きな影響を受けた。
だからと言って、現実にリアル・ドクターキリコをやっていいわけではない。
そもそも、ドクターキリコは「助かる命は助かるに越したことはない」という考えだ。
治療して助かるなら、その方が良いという考えであると作中でも描かれている。
検察の判断
今回の検察は、被害者の病気が安楽死を選んでも仕方がない状況でだったという判断はしていない。
死期が迫っている程ではなく、最低限度の条件も満たしていないとのこと。
検察は、おそらく海外で安楽死が認められるケースを参考にしているだろう。
海外でも安楽死は、治療で回復見込みがない、患者が死ぬ以上の苦痛を伴っている、などの条件がないと認められない。
今回の被害者は、そこまでのレベルじゃなかったとしている。
被告が被害者と出会って、実際に診察をしてどのような判断を下したのかは不明だ。
もしかしたら最初から自分の用意した薬で安楽死をやってみたいという好奇心だった可能性もある。
そうなればドクターキリコとは、同じようで違っているだろう。
ドクターキリコはビジネスとして安楽死をさせる医師だが、信念はある。（もちろん違法ではある）
でも、もし逮捕された医師が好奇心や実験的な意味で安楽死を行っていたなら良くない。
もし被害者が苦しむことなく逝けたのなら、それだけが救いのある話だったかもしれないだろう。
ただ実際に苦しまなかったのかは不明だ。
被告の社会復帰
ただし日本社会において、被告のような考えの医師がいることは良いと思う。
でも実際にやっちゃダメだよねって話。
日本にも実際に安楽死を望んでいる患者もいる。
日本で必要以上に行われる延命治療を見直して、自然に任せる医療の在り方を考えるのも大事だろう。
無駄な延命治療での医療費がたくさん税金で使われている。
今後、被告の医師が社会復帰後、医学界にこれからどのような貢献ができるのかを考えてほしい。
主は死刑囚の死刑執行方法を安楽死に変更するために知恵を貸してもらうのが良いと思う。
日本の死刑は絞首刑なので、残虐といわれている。
死刑囚を安楽死させるための方法を考えるために、こういう医師の知識が役立つと思う。
なんなら実際に執行の現場で薬物投与する担当医になってもらうのはどうだろう。
ブラックジャックの物語は、死刑制度に反対しているので、感銘を受けた医師に納得してもらえるかは微妙だが。
またブラックジャックが死刑になる犯罪者の治療をする話がいくつかある。
京アニ事件の判決を見て、ブラックジャックのエピソードを思い出した人もいるだろう。
医師がドクターキリコに憧れている場合、死刑制度には反対してそうだ。
まとめ
司法が勝手に安楽死をさせた行動を違法だと裁くことに異論はない。
認められれば、日本各地で臨まぬ安楽死が多発する可能性があるだろう。
なんなら悪徳医師に金と引き換えの完全犯罪や殺し屋業に利用されかねない。
この度、被告の医師は、しっかりと罪を償うべきである。
安楽死したい患者の意思を尊重することも考え直すきっかけにしてほしいところだ。
もちろん医師の先生も多用な考え方があって良いと思う。
良くも悪くも自己犠牲になる犯罪者がいることで社会は変わるのだ。
安倍元総理の暗殺事件でも、統一教会の在り方が議論されるようになった。
日本社会の安楽死制度が検討されるきっかけになればと思う。
本日の記事は以上となります。
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